去る3月11日、東日本大震災から11年が経過しました。

この震災をきっかけに、防災意識や災害への関心を抱く様になった方々も多いと思います。

近年ではメディアの発展に伴い、防災に関する情報が様々な媒体を介して私達に伝達されます。

その情報の中には、GIS(地理情報システム)を使用し分析・可視化された情報も多くあります。

災害に関するデータの中には、オープンデータとして公開されているものも多いので、誰もが容易に取り扱う事が出来ます。

こちらのNHK取材ノートの方々は、実際にオープンデータを用いてGIS上で可視化・分析し、その結果に基づいた取材内容を非常に分かりやすくまとめられています。

多摩川沿い なぜ“浸水エリア”に新築が… 徹底分析しました

https://www3.nhk.or.jp/news/special/saigai/select-news/20191203_01.html

”浸水エリア”の人口全体と高齢者(65歳以上)の推移を分析してみました

上記の記事でいう”浸水エリア”とは、想定最大規模の浸水想定データのことで、国土交通省が公開しているものです。また町丁目ごとの人口データは総務省統計局が公開している国勢調査によるものです。

NHKの記者の方が分析されたデータでは、多摩川沿いの“浸水エリア”で人口が増えているという結果でしたが、私たちの身近な地域ではどのような結果になるのでしょうか。これらの統計データを利用して、私たちも兵庫県武庫川周辺の”浸水エリア”(想定最大規模の浸水想定データ)の人口の増減を、NHKの記者さんが分析しているのを真似て、GISで可視化・分析してみることにしました。
現時点で公開されている国勢調査の最新データは2015年のものですので、その前のデータである2010年のデータとの比較になります。(ちょっと古いですが仕方がありません)

国勢調査の統計データをもとに人口増加率を集計し、武庫川周辺に少しでも浸水区域が重なっている地区(町丁目)のみを、GISで可視化すると以下のような図を作成することができました。

※2015年度及び2010年度「年齢(5歳階級、4区分)別、男女別人口」(兵庫県)(総務省統計局・独立行政法人統計センター)、令和2年度 洪水浸水想定区域SHPデータ(国土数値情報)をもとに作成

武庫川周辺の想定最大規模の浸水想定区域に一部でも含まれる地区は7市(うち神戸市は1区を含む)、調査対象の町丁目の数は全部で748地区あります。そのうち、人口が増加している地区は全体の39%(288地区)ありました。一方、人口が増加していない(増加なし又は減少した)地区は61%(460地区)ありました。

このように全体的には人口は減少していますが、市街地拡大図をみると、武庫川下流地域においては人口が増加している地区があることがわかります。

先述のNHKの記事では、多摩川沿いでは”浸水エリア”において人口が増加していると述べられていましたが、武庫川周辺の”浸水エリア”では、多摩川沿いのように一様に広い範囲で人口が増加しているわけではありませんでした。

高齢者(65歳以上)の人口推移

また、NHKの記事では人口増加と高齢者の移動に関して言及されていました。そこで、高齢者(65歳以上)人口増加率についても調べ、同様に可視化してみることにしました。

人口全体と比べて、高齢者のみに絞って見てみると、人口増加率の高い地域が多くなっていることがわかります。

武庫川周辺の想定最大規模の浸水想定区域の高齢者人口は、全体(748地区)のうちの87%(652地区)で増加していました。一方、高齢者人口が増加していない(増加なし又は減少した)地区はわずか13%(96地区)しかありませんでした。

全体的に人口が減少しているなかで、高齢者人口は多くの地区で増加していました。

※今回の結果は武庫川周辺の想定最大規模の浸水想定区域に限った集計結果です。

人口が4倍以上増加した理由は?

人口の増加についてデータ分析している際に、2010年から2015年の5年間で人口が4倍以上増加した地区がいくつかあることに気がつきました。なぜこの5年間にこんなに増加したのでしょうか。気になったのでそのうちの1地区を調べてみました。

茶色で示した地区は、2010年に比べて2015年の人口が4倍以上増加した地区です。

4倍以上に増加した理由とは、どのような理由なのでしょうか。

4倍以上になっていた地区を、今度はGoogle Earthで見てみることにしました。

写真左が2010年のもの、右が2015年のものです。

過去に遡って見ることができるGoogle Earth、素晴らしいですね。

写真を見ると、2015年には大きなマンションがいくつも建ち並んでいる場所が、2010年時点ではまだ建っていなかった事がわかりました。

なるほど、こんなに大きなマンションがいくつも建設されていれば、人口が4倍以上も増えているのは納得ができますね。

このように、GISでは様々なデータを可視化してわかりやすく表示することができます。データの集計についても様々な計算や分析手法が用意されていますので、提示したい問題点やその解決策などをわかりやすく表すことが可能です。

ご興味のある方は、これらのオープンデータを利用して日常生活に役立つ様々なデータを作成することに挑戦してみてはいかがでしょうか。